あの後、早速噂の隊士の子たちの部屋に向かうことになった。
直前までアオイちゃんに「くれぐれも気を付けてくださいね!」と散々注意された。
そんなに大変な子たちなんだろうか・・・?
「おはようございます。今日の分の薬を持ってきまし」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!またその薬!?」
言い終わる前に、すごい叫び声に遮られてしまった。
「また飲むの!?また飲むのねぇ!?いつまで飲むの!?それ苦いんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ま、まぁ飲まないと良くならないしねぇ」
「はっ!よく見たら初めましてさん!?しかもめちゃくちゃ綺麗!まさか女神!?初めまして!我妻善逸といいますぅぅぅ!!!」
すごいなこの子・・・金髪?いや、それより耳が痛い・・・。
金髪の子―善逸くんの勢いに圧倒されて、思わず後ずさりしてしまう。
「こら善逸!困ってるだろう!」
色んな意味で大興奮している善逸くんを、ピアスをつけた男の子が制した。
「すみません、俺は竈戸炭治郎といいます。こっちは嘴平伊之助です。薬、ありがとうございます」
ピアスの子が炭治郎くん、で伊之助くんは・・・・・・い、猪?
うーん、なるほど。これは個性大爆発って感じだなー。
ようやくアオイちゃんの言ってることが理解できた。
アオイちゃんもきっと苦労しているんだろう。
そう思いながら、ひとまず準備を進めた。
「さて、と。では改めまして、初めまして。みょうじなまえです。ここで、怪我をした隊士の皆さんの看病などをしてます。よろしくね」
自己紹介を簡単に済ませて、薬の説明をしていく。まあ、何度も聞いているだろうけど。
ここの運ばれてきた直後は相当酷かったと聞いた。こんなに若い子たちが・・・と思うと、毎回胸が痛む。
それでも、私にできることはこれくらいなのだから、精一杯頑張らないと。
「それにしても、善逸くんはこれ1日5回飲むんだよね。これ相当苦いって聞いたけど」
明らかに美味しくなさそうな飲み物だ。これを1日に5回とは、可哀そうに。
「そうなんです!そうなの!!分かってくれます!?もういや!飲みたくない!!本当に!!!」
「でもそれじゃあ手足短いままだよ?」
「それもいや――――――!!!」
「うん、じゃあ飲もう」
「いや―――――――――――!!!」
うーん、どうしたものか。こんなやり取りを繰り返していても埒が明かない。
頭を悩ませていると、ふと思い出した。
ポケットに手を入れて、取り出したものを差し出す。
「・・・・・・・飴?」
蜂蜜色に輝く飴を見て、ピタッと止まった善逸くんに、そっと耳打ちをした。
「そ。飲み終わったら1つあげる。これ、すっごく甘くて美味しいんだよね。私のお気に入り」
甘い物、きらい?と顔を覗き込むと、善逸くんの顔が、今にも沸騰しそうなくらい赤くなっていて、そして激しく首を横に振った。
「じゃあ頑張って飲もう。あ、これあんまり手に入らないんだ。だから、君と私の秘密ね?」
それから張り切って薬を飲み終えた善逸くんに、えらいね、と言ってこっそり飴を渡した。
また顔を赤くした彼を見て、かわいいなぁと心が和む。
表情豊かで、面白くて、かわいくて、見ていて飽きない。
なんだか少し、懐かしい気持ちになった。